インドネシア株(銀行系)のすゝめ

米国高配当株投資(VYMやSPYD等)や全世界株投資が流行っていますが、全額米国系の投信にぶち込むのはあまり楽しみがないですよね?

 

趣味として分散投資先を創る時に面白いと思うもの、その一つがインドネシア株です。インドネシアってどんなイメージですかね?

昨今の高速鉄道計画で、日本はインドネシアのジョコ大統領にコケにされました。インドネシアは賄賂が横行している国なので、中国の賄賂に負けたという考えでもOKですが。インドネシアの人口は2億7000万人(2019年, 世界銀行)で、以下の通り、右肩上がりの国家です。

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2019年, 世界銀行

コブダグラス生産関数やマクロ経済をやったことがある人は経済規模が

Y(経済規模)=A(生産効率・技術水準)・P(人口)・K(資本・お金・工場)

で決定していく過程を勉強したことでしょう。インドネシアはこれからAを改善し、Kを呼び込もうとしている途上にあります。

ではYに当たるGDP(みんながお金を1年でどれだけ使っているか)を見てみましょう。

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2019年, 世界銀行

指数関数的に伸びていますね。人口増に加え、AもKも増えていると推定されます。

 

社会的事情

民主主義国家と言われつつも、議会には軍人枠がある。

世界最大のイスラム教国家(お酒は飲むし、非常に緩い)。

バリ(仏教・観光地)+ジャワ島(ジャカルタがある)でできている。スマトラ島カリマンタン島スラウェシ島ニューギニア島西側が面積として大きいが人口はジャワ島が大部分を占める。

 

地政学

ASEAN本部ってどこにあるか知ってますか?シンガポールではなく、インドネシア首都ジャカルタです。ASEAN加盟国で人口はインドネシアが最も多いです。将来の大国候補ですね。

インドネシアスマトラ島・マレーシア・シンガポールマレー半島で重なるマラッカ海峡は中東からの石油を載せたタンカーが日本・中国・韓国へ向かう非常に重要な場所です。物流の非常に重要な拠点です。

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中国はウィルス(×2)と政治的にも仲良くしかねる部分があるのでChina+1という戦略をとる企業が多いですが、+1として一人当たりGDPが低く、貿易特区(輸出)だけでなく、将来的には内需も見込めるインドネシアには今後大規模な資本投下も見込まれます。

 

リスク

・コロナは制御不能状態

 →政府はほぼほぼコントロールできていない、致死率も非常に高いです。憤りを感じます。)

・賄賂国家であること

 →ミセス10%=スハルト元大統領の妻ティン婦人)(ただ、賄賂=経済成長の悪化に直接つながるわけではない、Pranab Bardhanの論文の分析が面白いかと。

外資への嫌がらせも過去にやっている

 →デジタル課税もするらしいですし(Reuters, Tabita Diela and Fanny Potkin, May 15 2020, https://www.reuters.com/article/us-indonesia-tax-digital-idUSKBN22R23V)、過去には資源輸出の課税も日本企業向けにやってました。

・労働者の質

 →真面目ではないとは言われますよね、インドネシア人が~ということはあまり気が進むことではないですが。

 

インドネシア銀行株ってどうでしょう?

こうした基礎情報に基づき、インドネシアの銀行株について考えていきます。

 インドネシア株全体で考えると危険です。

理由はつぶれるリスクがあるからです。そのリスクもとるぜという方はよいと思います。寛容な心でインドネシア経済を応援してください!安定・ディフェンシブ銘柄とされる電力・通信系の会社がよいかと思います。

 

インドネシア株式配当の利益にはインドネシアの現地課税が20%かかります。

100円の配当があれば80円、入金されます。日本の証券会社ではここからさらに日本で約20%課税され、64円くらいになります。ここだけは押さえておきましょう。

 

なぜインドネシア銀行株なのか=理由はつぶれないから

日本の銀行はつぶれそうとよく言われますが、これは半分本当で半分うそです。

日本のメガバンク3行はtoo big to fail (TBTF)でつぶせない銀行です。リーマンショックでリーマンブラザーズという投資銀行が潰れた後、その後の経済混乱にビビった世界が、大きな銀行はなんとしても潰さないようにしようということになりました。(TBTFの銀行はFSBという機関が決めて、その経営状況を監査し、経済ショックへの体制をつけるための議論が行われています)

一方で日本の地方銀行はそのような銀行ではないので、つぶれてもかまわない会社です。(日本の場合は地銀が潰れるとその地域の経済がショックを受けますので、つぶさないとも思いますが)

 実はインドネシアの銀行はTBTFではありませんが、要するに大きな銀行はつぶせないのです。インドネシアの政治家がまともじゃなくなると困りますが、まともな経済運営を考えるのであれば、大きな銀行=Too big to failな会社となるのです。

 

ところで銀行のビジネスモデルは金利の利ザヤです。

今先進国は政策金利を下げており、お金が世の中にたくさん回るようにしています。この政策金利は銀行がお金を貸すときの金利と連動しているため、先進国の銀行の利益構造が崩れています。

一方インドネシア政策金利は未だ高いままです。金利が安い国には魅力がないので、外からの資金が逃げてしまうからです。アジア通貨危機に関連した経済危機はタイの通貨バーツの暴落により、始まりましたが、アジアの国は特にこのような事態を繰り替えさないように、自国の通貨の価値=金利の高さを下げ過ぎないように気を使っていると言えます。

Y=A*P*Kの経済構造はどの国でも維持されるので、Pが絶対的に増えているインドネシアはそれに見合ったK(資本)をとにかく呼び込む必要があります。政策金利を上げすぎると国内のお金の周りは悪くなりますが、銀行の収益は上がります。政策金利インドネシアの人口規模/資金が海外に逃げることによるルピア安懸念を考えるとこのまま維持される公算が高いです。つまりインドネシアの銀行の収益もこのまま伸びていく可能性が高いです。

 

 

 

4つのインドネシア主要銀行

銀行個別の詳細は(こちら)

ただ、URLから個別で詳細を検索することをお勧めします。インドネシア語の表記と同様に数字の少数点は「.(ピリオド)」ではなく、「,(コンマ)」です。3桁ごとの「,(コンマ)」は「.(ピリオド)」となっているので注意です。

・ BRI:Bank Rakyat Indonesia

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(参照: BRI, Investor Relations, https://ir-bri.com/)

総資産 1416.8兆ルピア(2019)

・Bank Mandiri

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(参照: Bank Mandiri, Investor Relations, https://www.bankmandiri.co.id/en/web/ir)

総資産 1318.2兆ルピア(2019)

・BCA: Bank Central Asia

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(参照: Bank Central Asia, Investor Relations, https://www.bca.co.id/en/Tentang-BCA/Hubungan-Investor)

総資産 919兆ルピア(2019)

・BNI: Bank Negara Indonesia

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(参照: Bank Negara Indonesia, Investor Relations, https://www.bni.co.id/en-us/company/hubunganinvestor/presentationreport)

総資産 845.6兆ルピア(2019)

 

日本のMUFGの総資産は336.5兆円です(MUFG, 最新IR資料2020年3月期,  プレゼンテーション資料, p12, https://www.mufg.jp/ir/index.html)。

1円=100~140ルピアと考えて、120ルピアで計算すると、4京380兆ルピアと比較できます。インドネシアと日本では経済規模が違いすぎるので、単純比較はできませんが、やめてMUFGに投資をと考える気持ちもわからないでもないです。

インドネシアの経済成長率は現在5.5%前後を推移しており、GDPは1.1兆ドル(日本は5.1兆ドル)です(World Bank, Data for Indonesia and Japan, https://data.worldbank.org/?locations=ID-JP)。

 

Xlog(1.1兆ドル*(1.055))=log5.1兆ドル

X=30年

 

今の成長率を30年続けると日本の今のGDP水準に到達します。最も未だインフラ整備も人口増加も進んでいる国なので、条件次第ではさらに短いかもしれません。将来の大国候補は間違いないです。

最後に基本事項として

個別企業への投資は最低限PER・PBRを見て自分で判断してください。

PER 15倍が平均、それ以下だと比較的割安(株価/一株あたり純利益)

PBR 1.2倍あたりが平均、それ以下だと比較的割安(時価総額/純資産)

単にこれだけを見ておけばよいというわけではなく、特別損失やROE、各種ニュースのチェックはするべきです。責任はとれませんので。

Indonesia bisa!(インドネシアならできる!)ということで、インドネシアがコロナを乗り越えることを願っております。