香港国家安全法のヤバさ

遡及法かつ外国人も処罰対象/「共産党批判」「香港独立」の主張が違法に

香港に住んでいない人でも違法となり逮捕される可能性があります。

香港国家安全法とは

1997年のイギリスからの香港返還から23年、50年は香港の民主的な諸制度(政治・行政・司法)を変えないことを英中共同声明(https://www.cmab.gov.hk/en/issues/jd2.htm)で約束してきました。香港で国家の安全を維持することを目的とした法律らしいです(なぜこう書くのかは下記を見てください)。

一国二制度と呼ばれる高度な自治が香港には認められてきましたが、今回これが骨抜きになりました。これは英中共同声明という条約(Joint Declarationであるが批准条項・批准書が交付されているため、国際法として効力のあるものhttps://wedge.ismedia.jp/articles/-/19954)→香港基本法(ミニ憲法)に落とし込まれており、今回の措置は明確に中華人民共和国による国際法違反にあたります。香港における立法権は香港の政府にあり、今回の香港国家安全法は香港の議会で作られたものではなく、中国本土の北京政府により作られたものです。香港の法律に優先して施行されるという謎の条項入りなので、この点においてもめちゃくちゃな法運用を行っています。

例えば本来日本にいる日本人は中国の法律で裁かれることはありません。法律には「管轄権」があり、日本国民の代表者である国会議員が立法権を持つ国会で作った法律を日本人は守る必要があります。ですが、中国の法律を日本にいる日本人は守らなくてもよいです。簡単に書くと法の適用範囲(≒管轄権)があり、この原則は守られます。そもそも自分たちの法を作る権利を代議員(国会議員)に委託して作られた法律であれば、守る必要がありそうですが、そうではないものを守る道理はないです。

 

何が問題なのか

遡及法のヤバさ・外国人も対象です

周庭さんの逮捕が日本では連日報道されていますが、どうやら遡及的にこの法律を適用しているようです。「誰かがやった行動」が犯罪として裁判で処理されるには、「誰かがやった行動」がやってはいけませんと禁止している法律が事前に成立(正確には施行)されている必要があります。

極論悪いことをしても、それが法律で違法とされていなければ裁くことはできません。唯一人道に反する罪(第二次世界大戦中の戦争犯罪人国際法で裁く)については遡及法となった例外がありますが、みんなが明らかに悪いと思っていること(習慣的に悪いと思っていること)は習慣法として当然やってはいけないのだから法を明確に作った上で裁くべきだよねという考えもあり、納得できそうな説明ではあります(苦しいですが)。法治国家では基本的に遡及法の禁止は大原則となっています。

国家安全法の施行後周さんはSNS上での批判や投稿をしてこなかったとされており、法施行前のデモ参加呼びかけや批判的な活動が問題となり、逮捕された可能性があります。報道では罪状は伝えられなかったとしており、注目すべきポイントです。

当然過去の香港での中国の活動に対する批判的な活動についての賛同する投稿についても違法になるため、中国(中国の法律なので、中国の法律が及ぶ範囲全て)に入国した瞬間に、外国人が同法により逮捕される可能性もあります。この外国人には法人も含まれ、例えば現地香港人従業員が中国の活動に批判的な投稿をしていた場合、雇用主である外資企業が(香港のみでなく)中国全土で企業活動の停止に追い込まれる可能性もあります。(この法律は香港の法律ではなく、中国の法律なので)

 また、外国勢力との結託もそうですが、外国人(英国籍・米国籍)(https://www.afpbb.com/articles/-/3296882)が香港治安当局から手配されており、香港のために声を上げた外国人にも同法の影響が及ぶ可能性が高いです。高校生がSNS上に反共・香港独立の投稿を行ったこと(https://www.yomiuri.co.jp/world/20200730-OYT1T50121/)を理由に逮捕されていることから、批判的な人間すべてを逮捕することはなさそうですが、目立った人や政治的な交渉等を理由に見せしめに逮捕することは十分に考えられそうです。

報道の自由の侵害・民主主義を形成する根幹の破壊

 周庭氏の逮捕よりも深刻なのは、蘋果日報(アップルデイリー)のジミー・ライ氏の逮捕です。民主主義は正しい情報を国民が知り、その情報に基づき、各々が正しいと信じる投票行動を実施することにより実現されます。アップルデイリーについてはタブロイド紙の側面が大きいですが、政治家や大物の悪事を世にさらすという面では民主主義の根幹を支えていた報道機関の一つです。特に反共・反中国の主張を継続してきた特徴があり、今回目を付けられ、潰されたと言えます。香港市民の支援により、リンゴ日報・関連会社のネクストデジタルの株価は高騰し、同紙を複数枚購入する市民が出てきています。(https://www.nytimes.com/2020/08/10/opinion/jimmy-lai-hong-kong.html

日本の新聞社でも産経や読売(ざっくりと右派・対中強硬・現政権寄り)が好きな人、朝日や東京新聞(ざっくりと左派・親中・社会的弱者フォーカス・野党寄り)が好きな人、日経(やや右寄り、経済優先)が好きな人各々いると思います。お互い意見・フォーカスする分野が違いますが、様々な情報から判断して考えることができます。これが報道の自由です。政治家の腐敗や汚職については文春のようなタブロイド紙のタレコミや共産党によりリークされることもあります。

一方報道が制限されてしまえば、都合の悪いことは明らかにならず、声を上げた人はいつの間にか(文字通り)消されてしまいます。中国の民主派劉暁波氏の存在は今メディアでもほとんど取り上げられなくなってしまいました(https://www.asahi.com/articles/ASK6X4F55K6XUHBI01C.html)。また中国は死刑執行人数も明らかにしておらず、ウイグル人民族浄化の一貫でこういう報道もされています(https://www.epochtimes.jp/p/2018/04/32382.html)。臓器売買や収容所の話も漏れ伝わっており、フェイクニュースであるということは難しい(むしろ実態はよりひどい)と考えた方がよいでしょう。大勢は殺せないし、普通の人にはここまではしないはずですが、その気になれば実行することはできてしまう恐怖がある国であることは理解しておくべきです。

都合が悪いかどうか・逮捕するかどうか・影でこっそりと消されるかは中国共産党の判断次第です。香港国家安全法についても法律の解釈権は中国共産党(香港政府ではなく)にあるとされているので、同法への違反行為が何か不明な上、法施行前の行為も対象になりえるようなので、もはや何でもありです。堂々と「中国は法治国家である」とか言ってしまう中国の報道官ももはやギャグですが、正直中国で仕事はしたくないです。伊藤忠商事社員の逮捕(https://www.asahi.com/articles/ASMCV5J9GMCVUHBI01Y.html)もあり、伊藤忠の元社長が日本政府の駐中国大使になっていた件は有名ですが、愛知県の男性=トヨタor三菱重工関係者ではないかと考えられます。(https://www.asahi.com/articles/ASM2G5D8QM2GUHBI01C.html)罪状は国家の安全に危害を与えた罪で、最高刑は死刑・無期懲役もあります。

何をすればよいのか

周庭さんの逮捕・保釈(保釈は刑が決まっていない間留置所の外に出られるだけで、許されていないですよ)で、心動かされた人は多くいると思います。

報道の自由は民主主義の国にとって核心的な価値(絶対に譲れない点)ですし、これから香港への締め付けはさらに厳しくなるでしょう。できることは個人的にたくさんあると思います。以下プライオリティ順

・香港の情勢に対する意見を発しない日本の政治家・積極的に反対しない政治家をいじめる

https://www.hongkongwatch.org/

↑こういうサイトがあります。香港引渡の際の英中共同宣言(香港の政治・経済・司法制度を50年変えないことを約束したこと)に反する香港国家安全法に反対する政治家の署名一覧です。

https://sekainokawaraban.com/hongkong-kokka-anzenhou

↑日本語でまとめたサイトです。

議員は大体SNSyoutube、ブログ等をやっています。ターゲットの議員を名前で検索した後、質問状を送りましょう。IT弱者のおじいちゃんも多いので、積極的にさらしに行くのがよいと思います。トリプルゼロ議員とかもいるので、忙しくないわけがないですね(笑)

http://www.shugiin.go.jp/internet/index.nsf/html/giin_top.htm

↑当然名前はすぐに調べられます。

二階さんいじめもよいです(もちろん有権者として意見を発する範囲として)が、既に中国とパイプをお持ちの議員を消す方向ではなく、もちろん中国に圧力かけてくれるんですよね?という方向性がよいかと思います。

中国のハニートラップにかかっているおじさん方もいそうですが、そういう脇の甘い人は中国ハニートラップ以外にもやらかしているネタがあるはずなので、そういうネタを積極的に世にさらすのがベストです。アンチブログとか、わりと探すとありますよ。

議員によっては外交を専門としない議員もいるとは思いますが、民主主義の根幹が破壊されることに対して、何も考えられない議員はもはや価値無しと個人的に思います。

・民主派の支援(直接は危険なので、香港国外にいる方が対象)or IPACへの登録を地元議員へ要請

おそらく彼らは何等かの情報発信を続けていることだと思いますので、そうした方に支援するのがよいかと思います。

またはIPCAという議員連盟があり、日本のJPACによる香港人保護のための立法のニュースは大きくでていました。地元議員にこれを紹介した上で、加盟を求めるのがよいかと思われます。

https://www.ipac.global/

Members of the Inter-Parliamentary Alliance on China subscribe to the following principles:

  • Democratic states must maintain the integrity of their political systems, and actively seek to preserve a marketplace of ideas free from distortion.
  • A free, open, and rules-based international order that supports human dignity is created and maintained through intention. The persistence of such an order requires like-minded countries to participate actively in its governance and enforcement.
・今報道されている情報を保管する/ネットニュースはすぐに消されます。

現実的に香港の主権が香港にのみあると言い切ることは難しく、中国の一部であることは変えようのない事実ですし、中国の反論である内政干渉であるという批判も的を得ていると言えそうです。

次の中国の標的は台湾の併合です。その時のために香港で今何が起きているのか、民主派が何を主張し願っていたのか、保管しましょう。中国の多くの若者が天安門事件のことを知らないように、香港の今の情報は共産党の都合がいいように保管・拡散されていきます。

おそらく筋書きは民主派のデモの破壊行為を上げて、民主主義は野蛮だ。民主派のテロリスト(デモ参加者全てを共産党はテロリストと呼ぶ)が国外からの支持を受けて香港人を扇動し、破壊行為・治安悪化のための行為を実行させた。といった情報が拡散されるでしょう。

香港人の次世代への教育もそうした前提で行われていくはずなので、頭のおかしな民主派の人に先導され、破壊行動を行った香港人共産党が再教育し、民主派のテロリストは逮捕されたという事実が残っていくはずです。

台湾が第二の香港にならないように、真実を残していくことが必要ですし、中国の検閲に負けないように情報を拡散し続ける必要があります。拡散はおそらく、民主派の国外亡命者がしてくれるはずなので、メディアに情報を残しておくことが必要でしょう。

 

正直香港の状況はとんでもない状態です。助けられない段階に進んでしまっていますが、いつの間にかサイレントマジョリティーにされないためにも、合法的な範囲で議員をさらしものにするか、声を上げるかする必要がありそうです。

ちなみに国会には請願・陳情の制度がありますので、公式に声を上げることもできますが、今の流れにのり、SNSハッシュタグに反応するのも割と効果的だと思います。