コンチネンタル
自動車業界においてCASE(C: Connected, A: Autonomous , S: Shared, E: Electricity)が提唱されて以降、開発が激化する自動車業界・自動車部品業界ですが、Tier1の情勢を比較することを目的にコンチネンタル・ボッシュ・ZFを分析します。
GoogleやAppleが車を作るようになり、トヨタが負けるのではないか(?)という妄言?が出てきていますが、自動車業界で車の動力・制御・安全・快適性の提供の全てを統合的に提供できる会社が上記のみと言われているからです。アイシンに自動運転はできませんし、Googleに車のハード部品は作れません。
もちろん”車ではない何か”を作るようになる場合話は別になりますが。
コンチネンタル(Continental AG)はドイツ・ハノーファーに拠点をおく総合自動車部品メーカー。元はゴムやタイヤを作っていた会社です。買収を重ね、近年では総合自動車部品メーカーとして頭角を現しています。
日本では世界でもタイヤ業界の売上1位のブリヂストンが強すぎるため、コンチネンタルのタイヤはほぼ見ませんが、ヨーロッパではOE(純正タイヤ(車を買ってきた際に初めからついているタイヤ))のシェアが高いです。
タイヤ業界のシェアだと、ブリヂストン(1位)、ミシュラン(2位)、グッドイヤー(3位)に次ぐ、4位の順位となります(https://car-moby.jp/article/automobile-supplies/tire-studless/tire-manufacturer-popular-ranking/)。
会社の構成
コンチネンタルグループの機能部の下に以下事業部3グループが紐づく形になっています(https://www.continental.com/en/company/corporate-structure)。
・ラバー事業(Rubber Technologies)
創業事業であり、全体の4割を占める基幹事業。利益率も高く、安定。BtoB、C及び車以外産業にも製品を提供する。
…タイヤ事業
>>OE(純正タイヤ)
>>補給用タイヤ
>>特殊タイヤ
…Conti Tech事業
>>エアスプリングシステム
>>Conveying Solution(ベルトコンベアのゴム等)
>>Industrial Fluid System(液体が流れるゴムパイプ等)
>>Power Transmission Group(自動車やその他産業のベルト・部品システム)
>>Surface Solution(車内インテリアや室内装等)
>>Vibration Control(自動車やその他産業の振動コントロール)
・オートモーティブ事業(Automotive Technologies)
コンチネンタルの売り上げ増を大きく支える事業、大きくAMSとVNIの2つのグループに分かれる。利益は増減が激しく安定しないが、今後成長が見込まれる。現在伸びは低迷中。
…Autonomous Mobility and Safety(旧Chassis&Safety Division)
>>Advanced Driver Assistane System(Radar, Lidar等センサ、カメラ、自動運転ユニット)
>>Hydraulic Brake System(基本的なブレーキ~電子ブレーキ制御)
>>Passive Safety and Sensorics(統合安全制御、V2X、ECU、ワッシャーシステム)
>>Vehicle Dynamics(ブレーキシステム、エアサスペンション等)
…Vehicle Networking and Infroation(旧Interior Division)
>>Commercial Vehicles and Services
>>Connected Car Networking(車体コントロールモジュール、ドアコントロール、シート快適化システム、先進電子アンテナ、統合スマートデバイス等)
>>Human Machine Interface(ヘッドアップディスプレイ、マルチメディア、デジタル化メータ)
その他商用車向けサービスを提供する。
・パワートレイン事業(Powertrain Technologies)
パワートレイン事業については電動化に注力。事業がVistesco Technologiesとして分社化・IPO予定。
…Vitesco Technologies (旧Powertrain Division)
>>Electronic Controls
>>Electrification Technology
>>Sensing and Actuation
売上・比率
2019年売上は445億€、従業員数は24万1458人(2019年12月31日時点)、59か国に595の拠点(2019年12月31日時点)となっています。
現在右肩上がりにAutomotive部門を伸ばしており、現在成長が鈍化しているものの、急成長中の会社です。
地域別売上では全体的に伸ばしてきており、アジア、北米地域の売り上げを伸ばしています。
今後はアジア市場に注力し、北米市場のシェアを守るといった方針です。
OEM(自動車メーカー)のビジネスを現状の71%から60%にし、自動車以外のセクターとBtoCビジネスの比率を40%程度にバランスする方針のようです。
経営戦略上の特記事項
同業他社であっても協業することがあり、タイヤの競合であるブリヂストンとはタイヤ圧のモニタリング、可変速機の競合ZFとはHEVの駆動ユニットの開発を行っている。
パワートレイン事業の縮小・統合を見る限り、ZFへの事業売却を考えていたのかもしれないが、創業以来のタイヤの本業に囚われず、他の伸びる見込みのある事業への進出をアグレッシブに行ってきたのは特徴といえる。
伸びる見込みのある事業の選定についても、マス部分をピンポイントで取りに行く戦略をとり、完全自動運転の今後30年の採用見込みが少ないことがわかると、環境限定化での自動運転技術でトップをとることを目指す転換もとった。
エレクトロニクス・ソフトウェア領域の資産は途上であり、今後コンチネンタルが伸ばしていくべき分野であるとされています。今後は自動運転技術・安全分野でのリーディングメーカーとしてのポジションが期待されている。
CASE領域事業の分析
Chassis & Safety
この分野では「事故致傷車・死傷者を減らすこと」を意義ととらえ、段階的に高まっている欧州の自動車安全規制に沿い、2026年に向けてドライブモニタや自動ブレーキ、レーンキープなどの運転補助装置や、タイヤのモニタリング等の安全装置の受注を狙っています。
欧州で強力な競合となるボッシュに対し、タイヤを含めた統合安全を提案できることは強みですし、アジアへの注力を目指すコンチネンタルはヨーロッパでの実績を活かせるかもしれません。
自動運転では現在自動駐車、レーンキープや渋滞時・高速道路渋滞時の自動運転を市場に投入しており、2021年には高度自動運転支援(渋滞時・高速道路のみ)を投入、2023年には車のシェアリングを念頭に入れた限定環境下での自動運転(公共バスなど)、2025年+として、完全自動運転を目指しています。
自動運転に必要な各種センサやシステムを新法規制により、初期搭載を義務化し、それら各種機器の市場を広げていこうとしています。
ハードやソフトの各種部品やそれを支えるセンサ、それらを統合するシステム、車としての走行を支える車両システム、公共インフラ(V2X)や車車間(V2V)のシステムの全てのノウハウを持つところが強みとなります。
CUbE(Continental Urban Mobility Experience)を自動運転のコンセプトカーとして、部品メーカーでありながら作っています。
Vehicle Networking and Information
将来の自動車において、ドライバー・歩行者の情報、スマホ等のデバイス、GPS等のインフラ情報、自分の車の走行情報、近くを走る他の車の情報、これら多くの情報をまとめて、管理し、サービス提供や課題の解決につなげていくことが必要となります。
その実現のためには以下3つのポイントが重要になります。
・通信による情報の提供・受信(キーレスの車ロックやセキュリティ)
・ドライバーへの情報の提供(特殊ガラス無しでのメータ3D表示等)
・情報の統合・整理(特定車両の道路上の交通検出管理等)
こうしたコンセプトに合わせた開発が行われています。
システムやサービスの協業も行っており、データサービスやモビリティサービスの各種提供を進めています。競合の自動車部品メーカーと比較し、BtoCのタイヤ事業を持っているコンチネンタルはこうした分野で強みを発揮できるかもしれません。
こうした情報を支えるソフト・回路デバイスですが、特定の用途を持つECUを繋げた複雑な構造から、2025年までにシンプルな構造を持つZoneECUを複数サーバーでつなげる構造へ転換し、これらの構造を標準化・横展開する構造へ2030年までに変更していくビジョンを持っています。