自動車部品メーカー比較(売上について)

完成車メーカーと比較し、あまり日の当たらない業界である、自動車部品メーカーについて、売上の面から比較を行う。

 

そもそも自動車部品業界の市場規模は37兆円程度。

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完成車メーカーの市場規模が以下

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70兆円程度と言われています。

 

業界としてこれだけの規模で双方増えています。一方で最近注目のGAFA(M)について、売上高合計が88兆円と言われていますから( https://finders.me/articles.php?id=866)、市場規模的にトヨタがどれだけ頑張って車を独占販売したとしても、車だけだとこうした市場規模の大きいIT企業には勝てないということになります。

 

ちなみに時価総額ばかり比較されるGAFAですが、それぞれ、以下です。

時価総額は株価(期待を含めた)により増減するため、正しく恐れることが必要です。

Google(アルファベット)…13兆円

Apple…26兆円

Facebook…5兆円

Amazon…23兆円

 

自動車部品業界の構造

ピラミッド構造になっています。

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Tier1と言われるのが、デンソーボッシュ、コンチネンタル等の会社です。Tier1はTier2、Tier3の会社たちから部品を買ってきて、ある程度の塊にした上で、それがいくらですと完成車メーカーと取引をしています。

Tier~というとカッコいいですが、要するに”下請け”です。構造的には建設業界・ITのSIer業界と同じ構造を持っていると言えます。基本的に購入したいトップの部分にいる人(建設業界では公共団体や不動産会社、ITでは民間企業や行政の大規模システムを作る省庁)から、~を作りたいんだけど(RFI、RFQ)が来て、いくらで作れますよという返答をTier2~3…以下の人たちの見積を取りまとめて、回答し、技術的な面、納期の速さも含め、選ばれれば、それを作り、納入するという感じです。

建設業界ではゼネコンや準ゼネと言われる直接工事を請け負う会社、SIerではプライムコントラクター(1次下請け)と言われる会社が自動車部品業界のTier1と呼ばれる会社にあたります。当然利益構造としてTier1が最もよく、その下に行くごとに利益部分は価格競争により、先細っていきます。自動車業界の場合はOEMと部品会社が系列でズブズブであるという背景があるため、価格競争は少ないがコスト情報も漏れているため、Tier1がOEMよりも多くの利益を上げているようなイメージはありません。ですが、Tier2以下の下請け会社よりもTier1の方が儲けているというのは確かでしょう。

パナソニックソニーが自動車部品に採用された!!というニュースがでることもありますが、これはあくまでこの枠組みの中での話で、Tier2でそれが採用されたという範囲の話が圧倒的に多いです。Tier1が部品の塊を作るための一部として既存のサプライヤではなく、これら会社の部品を採用しただけの話です。

ただ最近コンセプトカーとして、ソニーが完成車のEVを作ったり、パナソニックが車載事業として統合コックピットや電源ユニットを提案しようとしている話があり、これはOEMやTier1の会社の構造を壊しにかかるものであるため、注目すべき事象といえるでしょう。

OEMも車を売るだけではなく、その他の分野への進出を目指すことやTier1にお任せしてるだけにはいかないことになりつつあるため、Tier1の層が厚くなっているというところも注目ポイントです。

 

以下自動車部品メーカー売上高ランキングです。あくまでイメージです。

為替変動による影響と合併が激しいため、2013年の順位がそのまま今も同じとは言えません。

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さすがにブリヂストンボッシュとか比較しても意味がないので、比較対象はTier1の部品メーカーの上位の会社で、車関連の事業にある程度特化しており、総合的な提案ができる会社(パナソニックとか日立とかは除く)とします。

1. BOSCH(ドイツ・欧州系)

約10兆円の売り上げがあり、自動車部品の他、家電・工具や工場向けシステム等も手掛ける。売上構成は以下で、6兆1000億円程度が自動車部品の売り上げであるといえる。

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トヨタは車業界の変化の中で、町をつくり、車の周辺のインフラ、家、工場や店舗を繋げようとしているが、ボッシュは既にこうした車関連以外のサービスを抱えているため、シナジーを生み出すチャンスがあるとも言えそうです。

ですが、ノウハウがなければ買えばいい、シナジーがなければ事業を切り離して売却すればいいとされる世の中で、使えるかどうかわからない事業を手広く抱えているのはリスクであるともいえそうです。

 

BOSCHは非上場会社としても有名で、創業者ロバートボッシュの一族が株式を92%保有し、配当を財団として運用し、それを社会貢献活動へ出資しています。BOSCHが稼いだ会社の利益は従業員の給与収入と役員・経営者の収入を除き、その多くが社会貢献活動に使われるという、なんともいい会社です。

特殊な形態の会社で他にこのような形態を持つ会社を筆者は知りませんが、配当金がどこかの株主へ支払われてしまう会社と比較しても、社員のモチベーションは高いのではないでしょうか?

創業家一族の株式には経営権はなく、経営を行っているのは別の役員や経営層になります。

magneto:マグネトー(エンジンの点火装置)の開発(1886年)を創業としており、歴史的にもパワートレイン系には強いが、通信技術については近年の買収で補っている状況といえる。AIの開発センターを自前で持っており、研究開発を強力に進めているため(その額9000憶円)、その部分の弱みも解消されつつあるのが現状です。

2. Continental

こちらもBOSCHと同じく、欧州系のメーカーです。

 

 

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